今と違って私の子供の頃の万代池には風趣があった。今は大阪市の公園となって、桜も植えられ周囲は平坦になっているが、昔はススキの生い茂った起伏の多い土堤で、草の中に細い径があった。
お月見となるとみんなススキをとりにいった。
私の小学校の二年生か三年生の頃、ある日、先生に連れられて池の周囲の土堤を歩いていた。散歩かメダカの観察か、何かそんなことで一列になって歩いていた。草の径は一列でないと歩けなかった。土堤は起伏が多くて冒険にみちていた。
その日、誰だったか池に落ち込んだ。堤防の高さは水面から四米位あったから、落ち込んだ水の音も割合大きかったに違いない。受け持ちの先生はびっくりして堤の上から洋服を着たまま飛び込んで救いあげてくれた。この事件はいつまでも私たちの語り草になっていた。しかしこの飛び込んでくださった先生が西岡先生か松島先生かはっきり記憶がないのである。
万代池は財団法人住吉村常盤会の所有で戦後は大阪市の公園として貸与している。湖畔には住吉校下を中心にした「万代池に桜を植える会」が桜を植えて新しい桜の名所ができた。池の中央に橋ができたのは戦時中からである。 |